白松の和菓子づくり

第1回

香ばしく焼き上げた皮と、柔らかに煉り上げた餡(あん)が、口の中でひとつになってスーッと溶けてゆく ───

 モナカのおいしさは、皮と餡のハーモニーが決め手です。歯応えはサックリしていながら、中のしっとりした餡となじみがよい皮。口溶けがよく、口の中に張り付いてしまわない皮。餡の甘味を和らげる香ばしい皮。

 白松がモナカの皮には、おいしいモナカづくりをめざして、創業以来培ってきた白松の技術が凝縮されています。

 餡はもちろんですが、皮も自社製造。材料のもち米を蒸し、撞き、うすく延ばして焼き上げ、一枚一枚、弊社工場でつくられています。ひとつひとつの工程に、担当する職人たちの、厳しい目が光ります。

 モナカの皮はデリケート。材料は自然の産物ですから、どんなに機械が進歩しても、機械任せにはできません。最後は熟練職人が、鍛えられたカンを働かせて、できあがりをチェックしています。


第2回

もち米から作るモナカの皮

 サクッとして口溶けのよい、白松がモナカの皮。その皮は、仙台市青葉区赤坂にある白松がモナカ本舗の田んぼをはじめ、宮城県内で収穫されたもち米「みやこがね」から作ります。「みやこがね」は、もち米の中でも特に粘りの強い、最高品質のもち米です。

 蒸したもち米を搗いてお餅にし、モナカの型で一枚一枚薄く焼き上げ、自然乾燥させるのです。搗き方で決まる、お餅のきめ細かさと”腰”。それが、焼き上がりのサクッとした歯応えにつながります。もち米の他は、もちろん何も加えません。

 ところでこの「みやこがね」、本当の品種名は「こがねもち」と言い、宮城県生まれの父「農林17号」と、新潟県生まれの母「信濃もち3号」から生まれました。

 宮城の冷涼な気候に適し、よい品質の米がとれます。そこで宮城県では、県内で栽培される「こがねもち」を、「みやこがね」という愛称で呼んでいます。


第3回

ヨーカンに使う寒天も自家製です。

 ヨーカンや水ヨーカンは、よく煉り上げたあんを寒天で固めて作ります。水ヨーカンはヨーカンよりも寒天と水分を多くして、夏向きのさっぱりした口当たりに仕上げます。

 「寒天」は昔から、和菓子や日本料理に欠かせない伝統的な食材です。その寒天の原料は海藻で、煮溶かした海藻を凍結させたのち、乾燥させて作ります。海に囲まれた日本ならではの、創意工夫です。

 白松がモナカ本舗では、この寒天も自社工場でつくります。伊豆半島の稲取浜に揚がる良質の天然海藻を運び込み、洗って大釜で煮るところから始まる寒天づくり。

 ヨーカンの歯応えと弾力は寒天で決まります。納得のいくヨーカンをつくるために、寒天づくりも人任せにしない ──。それが昔から変わらない、白松の菓子づくりです。

 白松がモナカ本舗直営の甘味処「郷(ふるさと)」では、この自家製寒天をふんだんに使った栗あんみつ 690円(税込)、クリームあんみつ 745円(税込)をご賞味いただけます。

クリームあんみつ

甘味処 郷(ふるさと)

晩翠通り店 2F 仙台市青葉区国分町1-8-11 Tel.022-211-1820


第4回

秋、社員総出で栗を収穫

 栗は、お米以上に古くから日本人に親しまれて来た食べものです。日本産の栗の特徴は、でんぷん質が豊富でホックリしていること。そのため小豆やお米との馴染みがよく、日本独自の和菓子文化を育んで来ました。

 使う栗にこだわり、白松がモナカ本舗では、栗の栽培も手がけています。

 仙台から北へ約40キロ。加美町の山間にある約10ヘクタールの「白松がモナカ色麻栗園」に植えられた栗の木は約2000本。栗の落ち葉やイガ、餡を煮る時に出る小豆かすや精米後のモミなども堆肥として土に投入するなど、土づくりとこまめな手入れを欠かしません。できる限り化学肥料や農薬に頼らない栽培を心がけ、宮城県農産物品評会では、一等県知事賞の栄に浴しています。


第5回

苗を育てることから始まります。

 モナカの「皮」はもち米から作りますが、白松がモナカ本舗では、そのもち米も自家生産し、足りない分も宮城県内の農家に生産を委託しています。

 広瀬川を遡った山あいにある、白松がモナカ本舗の4ヘクタールの田んぼでは、春分と共に、社員による米づくりが始まります。

 最初の仕事は苗づくり。昔から「苗半作」と言い、苗の良し悪しで米づくりの半分が決まるというほど、大切な仕事です。

 その苗づくりの第一歩は塩水選(えんすいせん)。種もみを塩水に浸し、下に沈む、実の詰まったよいもみだけを選別する作業です。種もみを入れた竹ざるをどっぷり塩水に浸し、浮き上がるもみを網で救い、井戸水で塩分を洗い落とし、ござに広げて干すという手間をかけた昔ながらの手作業が白松流。

 30年来農作業を担当しているベテラン社員に加え、ふだんは隣接する工場でお菓子づくりに携わる社員も応援して、一斉に作業が行われます。

 そのあと、10日ほど種もみを井戸水に漬けて発芽を促し、育苗箱へ蒔いて育てます。5月の田植えまで、赤ん坊を育てるのにも似た、気の抜けない日々が続きます。


第6回

さっぱりした甘みは純度の高い砂糖から

 和菓子の甘みを決めるのは砂糖です。砂糖は、サトウキビやテンサイ(甜菜)から作りますが、精製度によっていろいろな種類があり、舌に感じる甘さも異なります。

 日本でよく使われる砂糖では、黒砂糖、三温糖、上白糖、グラニュー糖、白ざらめの順で純度が高く、純度が高いほどあっさりとした軽い甘みになります。

 それぞれの特徴に応じた使い分けがされるのです、白松がモナカ本舗でおもに使われるのは最上級の白ざらめです。小豆や栗、胡麻など素材の持ち味や風味を損なうことがなく、しかも食べた後がさっぱりとした、上品な和菓子に仕上げることができるからです。

 砂糖の役割は甘みをつけるだけではありません。保存性を高めたり、酸化を防止する、高い保水力で餅などをしっとりさせるといった働きがあり、人間のからだにとっても、疲労の回復を早めるなどの効用があります。

 さっぱりした甘さの白松がモナカ本舗の和菓子と、一服のお茶……。暑い季節の清涼剤として、どうぞお召し上がり下さい。


第7回

いんげん豆の王様「大福豆」

 大福豆と書いておおふく豆。白松がモナカ「大福豆」は、舌触りなめらかな、白あんのモナカです。大福豆はいんげん豆の一種で、小豆(あずき)に比べると、かなり大ぶりです。いんげん豆の仲間には、他にも手亡、うずら豆、金時豆、虎豆などがあり、それぞれに適した用途に使われています。

 その中でも大福豆は、ビロードのようにきめ細かい粒子を持ち、色が白く風味がよいという優れた特徴をがあり、それゆえに、いんげん豆の王様とも称されています。

 白松がモナカの大福豆のふるさとは、北海道南部、洞爺湖の周辺。大福豆は王様だけに気むずかし屋でデリケートな面があり、栽培に人手がかかります。支柱を伝って人の背丈以上にもつるを伸ばす大福豆。秋には、手作業で収穫作業が行われます。

 北海道の農家の皆様が、手塩にかけて育てた大福豆。白松がモナカ本舗では、その味わいを存分に引き出し、なめらかで上品な白あんに仕上げています。


第8回

小豆のあんは、日本独特の食文化

 モナカやヨーカンをはじめ、和菓子のあんの材料として、欠くことのできないのが「あずき」です。白松がモナカ本舗のお菓子には、十勝地方を中心とした 北海道で栽培される、良質な小豆だけが使われています。

 乾いた空気、昼夜の寒暖の差、夏の日差し、そして広大な畑を耕す農家の方々のご努力が、風味のよい小豆を育てているのです。生産や流通に携わって下さる現地の方々と、弊社との長年の信頼関係が、高品質の小豆の安定的な調達を可能にしています。

 その小豆の持ち味を最高に引き出し、風味のよいお菓子に仕上げることに、白松の職人たちは日々、一生懸命です。

 あずきを漢字で書くと「小豆」。大豆に対してこの字が当てられたほど、日本人には昔からお馴染みです。ところが世界的に見えると、小豆の食べるは東アジアの一部だけ。

  しかも、小豆を砂糖と共に煉り上げた「あん」は、日本で発達した独特の食文化なのです。小豆は英名でもAdzuki-bean。まさに日本を代表する豆、そして、あんが和菓子を育てたと言っても、過言ではありません。


第9回

胡麻モナカ、胡麻ヨーカン誕生物語

 ご好評をいただいている、白松がモナカ本舗オリジナルの胡麻モナカと胡麻ヨーカン。その誕生は50年以上も前に遡ります。

 香りがよく栄養価にも優れた胡麻は、昔から精進料理に多用されるなど、日本の食卓に欠かせないものでした。その胡麻をふんだんに使ったモナカやヨーカ ンができたら、さぞおいしかろう。お客様に喜んでいただけるに違いない──。そんな思いから、製品開発が始まったのです。

 胡麻のいのちはあの香り。風味を損なわず、舌触りのいい胡麻あんを作るための試行錯誤が続きました。ヒントになったのは、女性がお化粧に使うファンデーションでした。デリケートなお肌につけるものだけに、ミクロのなめらかさが求められるファンデーション。その製造機械を研究改良した白松独自の胡 麻擂り機の開発によって、ついに納得のゆく製品ができるようになりました。

 焦げないように均一に。ベテラン職人が、大きな釜でじっくり煎り上げた香り高い胡麻を、ていねいに擦り、小豆あんを加えて練り上げる──。気の抜けない作業が続きます。


第10回

収穫された栗は、氷温でひと眠り

 宮城県色麻(しかま)町の里山にある、白松がモナカ本舗の色麻栗園。毎年、10月の収穫シーズンを迎えると、ふだんは静かな栗園が活気づきます。 

 ここで栽培されている約2000本の栗の実の収穫作業を行うために、ふだんは和菓子作りにたずさわっている社員たちが、仙台から連日交代でやって来るからです。和菓子職人にとっては、この時期だけの大切な、でもごくあたり前の仕事。栗拾いは、栗菓子づくりの第一歩だからです。 

 見事な新栗を、一刻も早くおいしい和菓子に仕上げたいところですが、お客様にはもうしばらくお待ちいただかねばなりません。 

 と言うのも、白松がモナカ本舗では、栗本来の甘みを充分に引き出すために、収穫した栗を3週間から1か月、氷温で寝かせて熟成させるという、手間かけているからです。 

 眠りから覚め、一段と甘みを増した栗。その「選りす栗(ぐり)」をひと粒ひと粒、白松の職人たちが丹精込めて、美味しい栗和菓子に仕上げます。


第11回

山あいの工場に漂う海の香り

 さらりとした食感が身上の、白松が水ヨーカン。なめらかな舌触りと口溶けのよさは、自社で製造する寒天から生まれます。

 寒天の原料はマグサ、オグサ……など天然の海草で、総称して「テングサ」。

 寒天の性質はテングサのブレンドひとつで決まりますから、納得のゆくものを求めて自前を貫いています。

伊豆半島のきれいな海で、海女の方々が潜って刈り取ったテングサです。

その海の恵みを、大釜でていねいに煮出すことから、白松の水ヨーカンづくりが始まります。


第12回

「白松基準」はHACCP認証を受けています

 白松のお菓子づくりは、製品が完成したあとも続きます。使った器具の洗浄、乾燥、殺菌。床に一滴の水滴も残さない徹底した清掃……。 

 おいしいお菓子である前に、安心してお召し上がりいただける信頼のお菓子でなければならない──。こうした創業以来の衛生観念は伝統となって受け継がれ、歴代の社員によって積み重ねられた衛生管理に関するチェック項目は500以上に及んでいます。 

 こうした、衛生管理のいわば「白松基準」は、仙台市による評価を経てさらに改善改良が加えられ、平成21年には赤坂工場が「仙台HACCP(仙台市自主衛生管理評価)」認証を受けました。

 「品質は語る──」。この言葉を社員ひとりひとりが胸に刻んで、きょうもお菓子づくりに精出しています。